全固体電池「2030年大規模化」を中国が国家計画に明記、日本勢が問われる量産力

全固体電池「2030年大規模化」を中国が国家計画に明記、日本勢が問われる量産力

ニュースの概要

中国の工業情報化部など7部門がまとめた「新型電池産業発展第十五次五カ年計画」で、全固体電池を2030年までに初期的な大規模応用の段階へ進める方針が示された。全固体電池は、燃えやすい液体の電解質を固体の材料に置き換えた電池である。発火のリスクを下げやすく、同じ重さでより多くの電気をためられる可能性がある。CATLは2027年ごろの小規模生産を目標に掲げるが、技術が成熟するまでにはなお複数の段階が残ると説明している。国家の計画に年限が書き込まれたことで、研究段階にあった技術が産業政策の主役へ移りつつある。

引用元: 中国、2030年の全固体電池大規模適用を国家計画に明記(China Daily)

分析・見解

「研究テーマ」から「国の工程表」へ格上げされた意味

今回のニュースで重要なのは、技術そのものより、年限が国の計画に書かれた点である。五カ年計画は、予算、補助、調達、人材配置を動かす基準になる。企業にとっては「どの技術に資金が集まるか」を読む手がかりになる。

中国はこれまでも、電気自動車や太陽光パネルで同じ手法を使ってきた。目標を先に示し、国内の競争で価格を下げ、その後に輸出で世界へ広げる流れである。全固体電池でも同じ道筋を描いている可能性が高い。

2027年の小規模生産と2030年の大規模化は、まったく別の山である

CATLが掲げる2027年ごろの小規模生産は、試作品を少量つくれる段階を指す。2030年の「初期的な大規模応用」も、全車種への搭載を意味しない。高級車や特殊用途など、価格が高くても買い手がつく分野から始まる見通しである。

ここに大きな壁がある。固体の電解質は、電極との接触面にすき間ができやすい。充放電を繰り返すと材料が膨らんだり縮んだりして、性能が落ちやすいのである。実験室で数枚つくることと、工場で毎日数万枚を同じ品質でつくることは別の技術である。

液晶ディスプレーの歴史が参考になる。小さな試作品から大型パネルの量産まで、歩留まり(=良品の割合)を上げるのに十年単位の時間がかかった。全固体電池も、最初の数年は高価で台数が少ない時期が続くだろう。

日本が持つ特許の強みと、量産で追われる弱み

日本は全固体電池の特許件数で長く世界の上位にいる。トヨタ自動車は2020年代後半の実用化を掲げ、出光興産と固体電解質の材料で組む。材料の研究では日本に厚みがある。

一方で、量産の速度と投資の規模では中国が優位に立ちやすい。国が目標を示し、企業が一斉に設備を整える体制は強力である。特許で先行しても、製造の経験で追い越される例は液晶や太陽電池で繰り返された。今回の計画は、その再現を警戒させる材料になる。

見落とされがちな視点:安全性が保険料と規制を変える

もう一つ注目したいのは、安全性の効果が電池の外側に及ぶ点である。発火しにくい電池が普及すれば、蓄電所の立地条件、消防の基準、保険料の算定が変わりうる。住宅地に近い場所や、建物内への蓄電設備の設置が進めやすくなる。

電池の性能表だけを見ていると、この波及を見逃す。規制や保険の変化は、技術の普及速度を左右する静かな要因である。

ビジネスへの影響

調達担当は「2030年前後の価格表」を二本立てで想定する

電池を使う製造業や蓄電設備を導入する企業は、液体電解質の電池を前提にした現行の計画を、すぐに変える必要はない。ただし、2030年前後の調達計画には「従来型を使い続ける場合」と「全固体電池を一部採用する場合」の二つの価格表を用意しておきたい。

初期の全固体電池は高価になるため、全面切り替えは現実的でない。まずは、重さや安全性が価格より重視される用途で検討が始まるだろう。自社の製品の中で、そうした用途がどこにあるかを洗い出しておくとよい。

取引先の中国依存度と材料の調達経路を点検する

電池の材料や部品の調達先が特定の国に偏っていないかを、今のうちに確認しておくべきである。中国が量産を先行すれば、固体電解質の原料や製造装置の供給でも、中国企業の存在感が増す可能性がある。

具体的には、主要部品ごとに代替の調達先を一つ以上確保できるかを点検する。契約の更新時期に合わせて見直せば、費用の負担も抑えられる。

投資や提携は、技術の段階を見て小分けに判断する

全固体電池に関わる企業への投資や提携を考える場合、発表された目標年だけで判断しないことが大切である。試作から量産までの途中段階、たとえば歩留まりの数値や、車載試験の走行距離といった中間指標を確認したい。

一度に大きく賭けるより、段階ごとに追加の判断をする形が安全である。国の計画は追い風だが、技術の遅れはどの国でも起こりうる。目標が一年遅れても事業が成り立つ計画を立てておくことが、実務上の最良の備えとなる。

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