Solid Powerが硫化物系電解質の連続製造を開始、全固体電池は材料の量産力が問われる段階へ

Solid Powerが硫化物系電解質の連続製造を開始、全固体電池は材料の量産力が問われる段階へ

ニュースの概要

米Solid Powerは、コロラド州にあるSP2施設で、硫化物系固体電解質を連続して作るMOBIUSパイロットラインの立ち上げ作業に入った。固体電解質は、全固体電池の中で電気を運ぶ道の役目を果たす材料で、電池の性能とコストの両方を左右する。これまでの製造は、一回分ずつまとめて作るバッチ式が中心だった。連続製造は、原料を流し込み、途切れなく製品を取り出す方式である。今回のラインでは、品質のばらつき、時間あたりの生産量、検査の方法などを確かめる。目的は、将来の電池メーカーへの供給と、製造技術そのものの外部提供につなげることにある。

引用元: Solid Power、硫化物系固体電解質の連続製造パイロットラインを稼働開始(Global Auto Insight)

分析・見解

電池より先に、材料の量産で壁にぶつかる理由

全固体電池の話題は、電池セルの試作や車への搭載時期に集まりがちである。しかし、実際に量産のボトルネック(=流れを詰まらせる箇所)になりやすいのは材料だ。硫化物系固体電解質は、リチウムイオンの通りやすさでは液体の電解液に近い水準に届く。その一方で、水分に触れると有毒な硫化水素が出る。扱いには、露点(=空気中の水分の少なさ)を厳しく管理した乾燥室が要る。さらに原料の硫化リチウムは高価で、安く大量に作る方法が確立していない。研究室で数グラム作れることと、毎月トン単位で同じ品質を出し続けることは、まったく別の仕事である。

バッチ式から連続式へ、変わるのは「ばらつき」の扱い

従来のバッチ式は、一回分ずつ混ぜて、反応させ、取り出す方法である。ロットごとに粒の大きさや純度がわずかに違い、電池にしたときの性能差になって表れる。連続式では、条件を一定に保ったまま流し続けるため、ばらつきを小さくしやすい。工程の途中に測定器を置き、その場で品質を確認する設計もしやすい。ただし、粉が配管や装置の壁に付着する、長時間運転で条件がずれるといった問題が出る。医薬品や化学品でも、バッチから連続への移行には数年かかった例が多い。パイロットラインの価値は、生産量そのものより、こうしたトラブルの種類と頻度を数字で把握できる点にある。

日本勢との比較で見える「材料を売る」という選択

Solid Powerの特徴は、電解質を電池メーカーに供給し、製造技術も提供する材料会社として立つ点にある。BMWやフォードなどの自動車大手と連携し、電池セルは提携先が作る形を取ってきた。日本では、出光興産がトヨタと組み、硫化物系電解質の量産を目指している。材料企業が先に規模を作り、電池メーカーが後から選ぶ構図は、日米で似ている。違いとして、日本勢は原料の硫化リチウムまで含めた一貫体制を意識している。米国側は、装置や工程の技術を切り出して売る発想が強く見える。

見落とされやすいのは、顧客ごとの電池設計との相性

電解質は、どの電池にも使える標準品にはなりにくい。正極材の種類、電解質層の厚み、プレスの強さによって、最適な粒の大きさや配合が変わるからだ。連続ラインが動いても、顧客ごとの仕様へ素早く切り替えられなければ、強みは生きない。顧客が三社あれば、三通りの条件を安定して出せるかが問われる。自動車部品のように同じものを延々と作る世界ではなく、段取り替え(=品種を切り替える作業)の速さが競争力になる。この点が、パイロットラインの検証項目の中で、最も見落とされやすい。

ビジネスへの影響

調達側は試作品の性能表より連続運転の実績を見る

電池メーカーや自動車メーカーの調達担当は、サンプルの性能表だけで判断しない方がよい。見るべきは、連続運転の稼働率、ロット間のばらつき、不良品の出方である。契約前には、水分管理の方法、硫化水素の安全対策、原料の調達先、供給量を増やす計画を確認したい。一社だけに頼る体制は危ういため、日本や韓国の供給元も並行して評価しておくと安心だ。社内では、材料の評価担当と工場の担当者が同じ表で議論できるよう、評価項目を事前にそろえておくと、認定作業が短くなる。

素材・装置メーカーには周辺技術に商機がある

電解質そのものを作らなくても、需要は生まれる。密閉した搬送装置、乾燥室、粉を扱う設備、ガス検知器、粉砕機などは、連続ライン化で必要数が増える。素材企業にとっては、硫化リチウムを安く安定して出せるかが差別化の軸になる。日本の装置メーカーは、リチウムイオン電池向けの乾燥室や粉体設備で実績があり、全固体向けに応用できる余地がある。ただし、硫化水素への対応は別設計になる点に注意が要る。技術提供型の事業では、特許と運転ノウハウをどこまで契約で守れるかも大事だ。

投資や提携の判断では三つの数字を追う

今回の発表は立ち上げの開始であり、量産の確定ではない。段階としては、立ち上げ、安定運転、顧客による認定の順に進む。確認したい数字は、歩留まり(=良品の割合)、一キログラムあたりのコスト、品種の切り替えに要する時間の三つである。これらが公表されるまでは、期待を織り込みすぎないのが現実的だ。四半期ごとの決算や技術発表で、数字の改善が続いているかを追うとよい。自社が出資や共同開発を検討するなら、契約に性能条件と供給量の達成目標を段階ごとに書き込み、未達時の見直し条項も入れておきたい。

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